ブータンの国技は“ダツェ”と呼ばれるアーチェリーです。アーチェリーは国技であるだけでなく、実際に男性の間でとても人気のあるスポーツです。首都でも田舎でもアーチェリー場はどこにでもあり全国共通の娯楽でもあります。昔は竹で作った弓と矢でしたが、今は洋弓を使う人が増えてきました。ルールはどちらも同じです。公式試合は5人1組の3チームで行われます。1ゲーム毎にチーム中の2名ずつが矢を放ち、的に当てた数で競います。
日本の弓道やオリンピックのアーチェリーとは違う点が多くあります。
まず、的までの距離がやたらと長いのです。弓道だと遠的で60m、オリンピックのアーチェリーは70mですが、ブータンでは130m。ブータンはアーチェリーでオリンピックに出場したことがあるのですが、良い成績ではありませんでした。その際に選手は「的が近すぎて当たらなかった」と言ったとの話もあります。実際アーチェリー場に行って見ると、“的はどこ?”と思うほどの遠さです。ブータン人は動体視力が良いようで放った矢が見えるようですが、私には全く見えません。
そして、的が一方向でなく両方向にあります。片方の的めがけて1人2本ずつ矢を放つと、その的の方に移動します。全員が終わると逆の的めがけて矢を放ちます。的までの距離が長いので、矢を取りに戻らずに済む合理的な方法です。しかし、かなり危険な環境でもあります。矢を放っている時にも移動のために横を歩く選手が居ます。またそのゲームで矢を放たない3名の選手が的の近くで的の位置を教えたりしています。観客席も特に決まっている訳でなく的の近くに居たりします。みんなのんびりとしていますが毎年事故もあります。
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