【129】忘れられない風景

先日、ラジオで「あなたの忘れられない風景」というテーマで番組をやっていました。さまざまな人が出演し、それぞれの風景を語っていました。同じ時間に同じ土地に立ったとしても感じ方はいろいろあるのだと改めて感じました。

旅を業(なりわい)としている私にとって、旅することは仕事でもありますから、美しい山々やふるような星空、目にしみるようなみどりの木々や燃えるような紅葉など、当然感動しますが、おそらく人の半分ぐらいしか風景をみていなかもしれません。それでも、忘れられない風景は?と聞かれたら、すぐに答えられるものがあります。

あれは、確か中国の華南省をバスで走っていた時のことだとおもいます。季節は秋、大きな太陽がしずむ頃、ポプラの木々が大きな影をおとしていました。その道端を大小二つの人影、長い長い田舎道を歩いている人たちがいます。この人達は、どこから来てどこへいくのだろうと考えながら、良く見ると一人の老人が小さな男の子の手をつないで歩いていました。二人で話している様子もありません。いそぐ事もなく、ゆっくりゆっくりと。でも しっかりとその手はつながれています。

ちょうどその頃、私も小さい息子を祖父である父に託して出張に出る日々でした。この異国で見かけた祖父と孫に自分の家族のことが重なり、なんだか胸が一杯になりました。

夕焼け空とどこまでも続くポプラ並木そしてそこに老人と小さなこども、まるで写真のようにはっきりと思い出すことができます。私の忘れられない風景です。

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