ブータンの国獣は“ターキン”という動物です。ターキンはウシ科に属しカモシカの仲間です。体付きは牛のようで顔は山羊のようにも見えます。ブータンの他、中国のチベットエリア周辺やインド北東部、ミャンマー北部のヒマラヤの山に生息しています。絶滅危惧種に指定されています。標高1,000mを超える竹林やシャクナゲの森の中に住み、夏は標高4,000mの草原へ移り、草や木の葉や実を食べて生活しています。
ブータンではターキンはドゥクパ・キンレイと言うユニークな経歴を持つ高僧が創造したという伝説があります。ある日ある村で法要が行われ、法要の後に食事が振る舞われている時にドゥクパ・キンレイが現れました。彼の服は修行のため古く汚れており、村人はドゥクパ・キンレイだと信じませんでした。そして本物であれば不思議な力を見せて欲しいと彼に要求しました。ドゥクパ・キンレイはその要求を無視して、残っていた骨ばかりの肉を食べました。食べ終わり、彼が指を鳴らすと、皿の上にあった残った骨が空中に浮かび上がり、牛の体を形作り、山羊の頭を形成し、新しい動物の形の影が浮かび上がり、肉体が形成され、牧草地の上で草を食べ始めました。これがターキンだと言われています。そのため、ブータンではターキンは高僧により創造された神聖な生き物とされ国獣と認定されました。
ターキンは本来深い森や4,000m以上の所でしか見られない貴重な野生動物です。しかし、第4代国王の時代、絶滅に瀕しているターキンを保護の目的でティンプーに連れてきて、ティンプー市民からは“モティタン動物園”と呼ばれる広い敷地の中で放し飼いされています。ターキンは日頃はゆっくりとのっし、のっし動いていますが、危機が近づくとカモシカ並みに走ることができるそうです。
ターキンの姿は恰好良いとも可愛いとも言えないですが、ブータンに来る機会があれば是非見てみてください。ブータンは遠すぎるなという方、種類は違いますが中国からの“ゴールデン・ターキン”が東京の多摩動物公園に居ますので訪れてみてください。