【128】異国を旅するということ

この夏インド研修をひかえている学生のお客様と、インドで気をつけたいことなどについて話をしていました。
公共の場所ではスリが多いとか、繁華街では親切なふりをしたうそつきが多いとか、順番を守らない人が多いとか、ルールはあって無いようなものだとか。
ごく一般的な注意事項から挙げはじめ、インドではどんなことに不自由したかしら…と思い巡らすうちに、列に並ぶときのインド人の感覚にはじめ戸惑ったことを思い出しました。

インド人にも「列」という観念はあります。ただし、その独特の間隔感覚(!)ゆえ、お先にどうぞの精神が根付いている私たち日本人などは特に、列で自分の番がいっこうにまわってこないことがあります。インド人が切れ目なく割り込んでくるからです。

でもそれは、インド人に譲り合いの精神が欠けているせいではなく、パーソナルスペースの感覚違いのせいであることが大きいと、ある日気づいたのです。

パーソナルスペースとは、人と人が接する際に居心地わるくならない最短距離のことをいいます。公共の場でのパーソナルスペースは、欧米人で3.5m、日本人は狭い居住空間や電車等での密着に慣れているため近く1.2mといわれています。
空港や観光地で観察していると、インド人は大柄な方も多いのに、この距離が非常に近い。ゆうに1mを切っているように見えます。これは、人口が多く常に渋滞や過密な状況を強いられているためにここまで近くなったのだろうと推測できました。
観光地に入場しようと列をつくるインド人とインド人の間の距離は、20cmも空いていればいい方で、ゼロ(密着!)なんていう間隔もザラに見受けられました。そんなインド人からすれば、外国人が並ぶ列などはスペースが開きすぎ、並んでいないも同然にみえるのだと納得しました。

インド滞在が1週間を超えると、もともと距離の近い日本人は、無理なくインド人の近さに慣れてきます。あるとき空港で、お行儀よく並ぶインド人のちょっとした隙間のうしろにサッとついた私。それを見ていた同行者から「その割り込み方はインド人はだしだね」と指摘されるまで横入りしたことに気づかなかったのでした。

異国を旅するということは、その国独特の感覚にふれその国やその国の人達を理解することだと、ぴったりインド人の後ろにつきながら思いました。

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