七夕は中国の伝説では「天の川の西岸に住む機織りの名手・織姫と、東岸に住む働き者の牛飼い・彦星が、織姫の父親である天帝のすすめで結婚したところ、仲睦まじくするばかりで二人とも全く仕事をしなくなってしまいました。これに怒った天帝が、天の川を隔ててふたりを離れ離れにしましたが、今度は悲しみに明け暮れるばかりで働かなくなってしまいました。そこで、仕事に励むことを条件に七夕の夜に限って再会することが許され、七夕になると天帝の命を受けたカササギの翼にのって天の川を渡り、年に一度、再会するようになった」というお話です。(All About暮らしの歳時記・三浦 康子)
この伝説は日本へは遣唐使などによってもたらされ、日本に従来からあった棚機津女(たなばたつめ)の信仰と混ざってできた風習が七夕だとされています。
このカササギが翼を並べて天の川に渡すという想像上の橋を「烏鵲橋」といいます。烏鵲はカササギの別称だそうです。韓国南部に南原という町があり、有名な「春香伝」の物語の舞台とされる広寒楼苑の敷地内に「烏鵲橋」と名づけられた石橋が架かっています。この橋を男女で渡ると結ばれるとか幸せになるとか言われています。
韓国ではカササギはお正月の歌にも出てくる吉鳥で、国鳥にもなっています。「朝、カササギが家の屋根の上で泣いたら嬉しいお客様が来る」というそうです。嬉しくなく、「お客様」でもないのに勝手に訪れたのが豊臣秀吉軍ですが、朝鮮出兵の折にカササギを九州に連れ帰ったという説があります。九州北部では「カチガラス」と呼んでいますが、朝鮮語でカササギを指す「カッチ」がカラスの上に付いた言葉とも、「カチカチ」という泣き声が「勝ち勝ち」で縁起が良いので連れてきたという説もあります。因みに佐賀県の県鳥はカササギ(カチガラス)で、Jリーグの「サガン鳥栖」のキャラクターはカチガラスをモチーフにしているそうです。
そのカササギ連れてきた武将の一人に鍋島直茂がいますが、彼は佐賀鍋島藩祖です。彼の実子・勝茂を初代として11代目藩主が直大(なおひろ)です。そして、その次女が梨本宮家に嫁いだ伊都子(父がローマ大使だったのでこの名前とか。皇族きっての美人だそうです。)で、その長女が大韓帝国皇太子・李垠(イ・ウン)の妻となる方子(まさこ)です。朝鮮半島に攻め入った武将の子孫が日韓の架け橋としての運命を背負うというのも歴史の不思議というものでしょうか。
かささぎの 渡せる橋に おく霜の
白きを見れば 夜ぞ更けにける
大伴家持作とされ百人一首に入るこの歌は私も大好きですが、このような日中韓(朝)の重層的な歴史と文化交流を考えると、北東アジアの平和と友好を一日でも早く実現してほしいと願うばかりです。