ブータンの人、特に東ブータンの人はお酒が好きです。ブータンの工場でビール、ウィスキー、ワインなども作られています。都会ではビールやワインも飲まれていますが、今でも各家庭で作っている地酒の方がよく飲まれています。
日本のどぶろくと似た“シンチャン”、“シンチャン”を蒸留した焼酎と似た“アラ”、“シンチャン”よりも固形でこれをお湯で溶いて飲む“バンチャン”、甘酒と似た“チャンケ‘などがあります。いずれも米、小麦、大麦、蕎麦、粟、トウモロコシなどの穀物を蒸して麹を混ぜて保温し発酵させて作ります。各地で収穫される穀物で作るため地方の特色もあります。
一番よく飲まれているのはアルコール40%ぐらいの“アラ”という蒸留酒です。“アラ”は常温や温めてストレートでも飲みますが、バターと卵を炒めて、そこに“アラ”を入れて温めた“ゴンドアラ”もブータンの人は好きです。地酒は友人、親戚が家に集まった時には欠かせないものです。我が家は日頃はお酒を飲まないので、地酒を作るのが上手な親戚や近所の方からいつも譲ってもらって常備しています。
日本では妊婦や授乳中のお母さんはアルコールを避けますが、ブータンでは甘酒に似た“チャンケ”を飲む習慣があります。出産後のお母さんが体を回復させ、授乳を促進するために、最も適した飲み物として伝えられています。妊娠して安定期に入ると“チャンケ”の素を仕込み、ちょうど赤ちゃんが産まれる頃にはほどよく発酵しています。赤ちゃん誕生のお祝いに来てくれた人にも振る舞い、出産後のお母さんもお客様と一緒に飲みます。お母さんのお腹の中で赤ちゃんが育つと共に育ててきた“チャンケ”なので、味が円やかで美味しければ赤ちゃんも穏やかで良い子だと言われたりもします。
ブータンではこれらの地酒は自家醸造が許可されていますが、販売は許可されていないので、レストランなどでは飲むことができません。だからこそ、今でも家に人が集まり、その各家庭の味を楽しむことができ良いのかもしれませんね。