新型コロナが猛威を振るう少し前の2019年11月、私は中国の西南雲貴高原の東北部に位置する貴州省を訪ねました。カルスト地形で形成された山や川、滝に鍾乳洞は実に神秘的で、中国では「公園のように美しい山地公園」と言われています。
北海道の約2倍の広さを持つ貴州省には18の民族が暮らしており、色鮮やかな衣装を身にまとうミャオ族やプイ族、トン族などの少数民族が、省人口のおよそ1/3を占めています。
私はいくつかのトン族の村を訪れましたが、特に印象に残ったのは「黄崗侗寨」です。近年観光客が訪れる地ではありますが、まだまだ典型的なトン族文化が静かに時を刻み、鼓楼、風雨橋、戯台などが完全な形で残っています。
数ある少数民族の中でも特に歌がうまいトン族は、西暦の11月28日、1000人トン族が集い、指揮や伴奏なくソプラノ、アルト、テノールなどのパートを融合されて奏でる「トン族大歌祭り」を盛大に開催します。「黄崗侗寨」から約5Kmの「黄崗侗寨」が会場です。
また少数民族にとって藍染めは欠かせないもので、特にトン族は普段着にも晴れ着にも藍染めを用います。その藍染めに光沢加工を施した亮布(りょうふ/通称:ぴかぴか布)は、しっかりと藍染めされた布を乾かし、鳥の羽などで卵白を塗りながら、木槌で生地の目を潰すまで何度も叩き、ぴかぴかに仕上げます。豚血を使うと深い青紫の布に仕上がります。この布は祭りの衣装として美しく仕立てられます。
中国への観光旅行が可能となった時には、ぜひ訪れていただきたい素敵な村です。