バリ島のおとなり、『とうがらし』という名の島・ロンボク島には、一年の漁を占う奇祭がある。〈奇妙な祭〉と言い放ってしまうのは失礼かな…と思いつつ、だって、奇妙なんだもん。と開きなおる。
それは、原住民ササック族の暦でいう10月20日(新暦の2月から3月にあたる。ここ数年は2月上旬であることが多い)、島の南端に位置するクタ海岸に色とりどりの『ニャレ』が押し寄せてくる、それをすくって食べる祭だ。言うまでもなく占いは湧いてくるニャレが多い年ほど豊漁となる。
ニャレとは、ゴカイのなかまで釣りに使う細いみみず様の虫だ。しかもそのテの虫に定番の肌色のほか、みどりやピンクなど色彩豊富なところが泣ける。ニャレ、ふだんは珊瑚の中に住んでいるという。
祭のいわれは、この島にむかし3つの王国があり、ふたつの国の王様から求婚されたお姫様が、優しさからどちらも選べず海に身を投じた。そのとき姫は「私は毎年10月20日に帰ってきます」と言い、翌年からこの海に姫ではなくニャレが大量にやってくるようになったということだ。
ニャレが大発生するのは一年でこの1~2日間のみ。島の権威あるお坊様がその日をズバリ予言すると、島の人々は未明から海に出てニャレの到来を待つ。そして、海がニャレ色に輝きだすと、われ先にとすくうのだ。ニャレは陽にあたると溶けてしまうため、この祭は未明から早朝に行われ、午前のはやい時間に終了する。なんとも幻想的?な祭だ。
今年、世界からロンボク島へのアクセスが便利になる。長年島民の悲願であった国際空港が、このクタ海岸の近くにいよいよオープンするのだ。
観光客の増加をあてこんでのリゾート開発が、ニャレの到来を脅かさないことを願う。
※「マカッサルと東京の間で」ブログより一部拝借いたしました。この場を借りて御礼申し上げます。