【67】就活の季節に

 当社の向かいに大手商社のビルがある。
昼前のひととき、息抜きにベランダからなにげなく向かいの商社のビルをながめていた。黒いスーツを着た若者たちがたくさんいる。真っ黒い集団だ。気になって 、翌日もながめてみた。やはり 黒い集団がいる。それで 気がついた。今は 就職活動の季節。OB訪問というやつだ。

 今の就職活動は、本当にたいへんらしい。エントリーシートをだし、何度も何度も面接筆記を重ねて採用になる。大学時代の貴重な時期を就職のために費やしていいものだろうかと疑問もわく。

 私は大学卒業を控え、進路を考えあぐねていた。やりたいことも将来も何も見えなかった。一社だけ、入ってみたいと思った会社を受けたが不採用だった。それから、一生使えるものをと思い、大学時代に学んだ中国語を選んだ。専門学校に通い必死に勉強した。もう あとは無いと思ったから真剣だった。

 暮れも近いある日、学校の玄関に1枚の張り紙があった。人材募集 中国専門旅行会社 四大卒 中国語堪能・・の条件。堪能は問題があるが、まぁ 受けてみようと受験した。受験場にいって驚いた。こんなにたくさんの人がうけるのでは、チャンスはない・・・と暗い気持ちで帰路についた。

 どういう理由からはわからないが、運よく合格通知を手にした。受かったことより、これで、どうするか悩まなくても良くなったことがうれしかった。1978年のことだった。まさか そこで26年も働くとは思わなかった。

 中国は1978年から改革開放路線をとり、訪中者は日増しに増えていった。天安門事件やSARSはあったが、得がたい体験をし多くの人に支えてもらった。良い時代を働けたとおもう。

 今 商社の前で待っている若者たちのどれくらいがあの会社に入れるのだろう。あと 26年後 日本はどんな社会になっているだろう。おもわず、みんながんばって・・・といいたくなった。

無料でご相談・お見積もり

TEL: 03-5411-7218
平日10:00~17:00