【42】自然と共に生きているひょうたんの村

 今年の夏、中国への旅言えば、やはりシルクロードのほうが良いかもしれません。新疆ウイグル地域を中心とするシルクロードの旅をしたい方には、こんな所をご紹介いたします。今まで、外国のお客さんが訪れたことはない巨大なタクラマカン沙漠の中にあるひょうたん村です。
 中国新疆ウイグル自治区の最南端にあるニヤ県(中国語では民豊と書かれる場合が多い)の街から砂漠縦断道路に入って約80km行ったところから西へまがって16km行ったところに小さなオアシスがあり(タクラマカン沙漠のほぼ中心)、そこが「ひょうたん村」です。
 ニヤ川の下流域にありますが、人口500人余りの小さなオアシスです。ここに住んでいる人たちは100%ウイグル人で、かつてのニヤ王国の子孫でした。3000年前のオアシス国でもあったニヤ王国の南玄関にあたる村です。半農、半牧で生活をこなしてきた人びとですが、今でも昔ながらの生活を続けています。
 現地のウイグル人はこの村のことを「カパクアスカン」と言います。これはウイグル語で“ひょうたんをぶら下げた”という意味を表わしています。その名前に相応しく、ここの村ではひょうたんがたくさん作られ、日常生活の中でよくひょうたんを使っています。
 砂漠で生活するウイグル人は昔からひょうたんをよく使ってきました。形と大きさによって使う場が違い、大きいものはお水やお茶の容れものですが、小さいものは水おけなどに使われています。さらに小さいものは香辛料などを入れる容器として使っています。この村の人びとはひょうたんを大事にしているので<ひょうたん村>と言われています。この村の人びとにとってはひょうたんは日常生活になくてはならないものになっています。
 この村の人びとは、崑崙(こんろん)山脈から流れてくるニヤ川の水と沙漠の英雄といわれるトグラック(胡楊)のお陰で代々に渡って大自然と共に生活を続けています。
 ここではコンクリートの建物は一切見かけません、映画館やパチンコ屋ももちろんありませんが、ボロボロのジャンパーを着て裸足で歩く子供たちがニコニコしてすぐ寄ってきます。ひげを生やしたおじいさんが“フシケプシズ”(よく来てくれました)と言って踊ってくれます。長い時間よその人を見ていないので、みんなお客さんが来ると大変喜びます。そして、お客さんを自分の家に連れ込んで御馳走してくれます。とても心のやさしい親切な人たちばかりです。
 この村にはイスラムの宣教に来て、戦争で亡くなったムハメットの孫であるイマミジャプルムのお墓があるので、ここはホータン人の聖地になっています。夏はホータン各地から沢山の巡礼者がここにやってきてイスラムの修行を行います。イマミジャプルムのお墓の前でコーランを読んで礼拝します。「ここに三回来たら、メッカに一回行ったことと同じことだ」と現地の人たちが言います。
 20世紀の初頭、ニヤ遺跡に入ったイギリスの探検家スタインなどもこの村を通ってます。スタインはニヤ遺跡に入り、多くの文物を発掘し、イギリスまで持ち帰ってしまいました。
 数年前にニヤの街からこの村までの舗装道路がでたのですが、風が吹くと沙漠の砂で道が埋められたりすることもあります。
 この村にはホテルやレストランなどはありません。宿泊はテント泊まり、食事は自炊となりますが、ラクダに乗って沙漠の探検をしながら、ウイグル人のずいぶん昔ながらの暮らしぶりを体験するというのはいかがでしょう。

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