【41】アリの行列

この春でブータンで暮らし始めて5年目になります。私が住む首都のティンプーは緯度は沖縄ぐらいで2千メートルの高地にあります。ブータンは5月、6月が一番暑い時期となります。しかし日本の高原の気候に似ていて、昼夜の温暖の差があり、寝苦しい夜はなくとても過ごしやすいところです。しかしこの時期になるとノミ、ダニなどの活動が活発になるのが悩みです。バルサンでも焚いてしまいたいところなのですが・・・

ブータンはチベット仏教を国教とし、多くの人が敬虔な仏教徒です。ブータン人はあらゆる生き物の存在を尊重し、自らの手でその生命をとめることをできる限り避けようとします。ブータンの家族の中で生活し、そんな彼らの精神を肌で感じることはたくさんあります。

私の両親がブータンに来た際にドゥゲルゾンという古城跡を散歩していた時のこと。ゴミがたくさん落ちていたのでゴミ拾いをしながら歩いていました。そこではたまたま焚き火をしていたので、私の夫は拾ってきたダンボールを燃やそうとしました。その時彼は木の枝でダンボールをそっと叩いたのです。父が何をしているのかな?と覗くと、彼はダンボールに付いたたくさんの虫を落としていたそうです。“ゴミを燃やそうと思うけど、虫を払ってあげなければ火の中で死んでしまう”と。父は彼のこの姿を目にしてブータン人の精神に感心したそうです。

また別の時ですが、ブータンに住み始めて間もない頃、ツアー中に夫とホテルに泊まった時のことです。二人とも疲れていたのでさあ休むぞと。その前に私はお風呂へ。彼はベッドでごろんと一休みかなと思っていると、ごそごそ動く音がし、戸が開く音も何度もするのです。友達のガイドが部屋に来たのかな?と思いながら、バスタブの中でゆったりとしてから部屋に戻ると、ベッドに立ち上がり何かをしている彼。部屋の中に蚊がたくさん入っていたので、蚊を一匹ずつ捕まえて外に出していたそうです。部屋に蚊がたくさん居たのはバスルームの窓が壊れ開いていたからだったのです。そして私は湯に浸かりながらパチン、パチンと。私のパチン、パチンもきっと彼に聞こえていたことでしょう・・・

が家にはネズミも住んでいます。このネズミが夜な夜な台所に出てきて運動会をします。運動会をするだけなら良いのですが食料を食べてしまうし、残り物の入っているお鍋をひっくり返してしまうのです。ネズミには別の所へ行ってもらいましょうとネズミ捕獲大作戦。まずは日本人から薦められたゴキブリほいほいのネズミ版を仕掛けてみました。純粋なネズミくんの捕獲は成功したのですが、ネズミほいほいには何と強力なボンドがついていること。ネズミにそこで死んで欲しいのではないのです。苦しんでいるネズミを貼り付けたまま捨ててしまうなどはできません。捕まえて他の所に連れて行ってあげたかっただけなのです。何とか生きて逃がすことはできたのですが、ネズミの毛は大量に抜け、逃がした人の手もべたべた。

ネズミくんはなかなか騙されて入って来てはくれませんが、古典的なネズミ捕りが一番のようです。

ブータンを旅行中にガイドに“アリがいます”と言われたら、アリが珍しくて説明をしている訳ではありません。
“アリを避けて歩いて下さいね”と言う意味ですのでご注意を!

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