【153】風が怖い

 9月になりました。今年の夏は、長雨が続き、夏らしい日が少なかったように思います。天候不順で各地で自然災害が起こりました。災害に逢われた方々には心からお見舞い申し上げます。

 東京に暮らしているせいでしょうか、天候や自然に鈍感になり、危機管理もできなくなっているような気がします。以前 登山家のかたに、自然に敏感になりなさい、五感を使って危険を察知しなさい。といわれたことはとても印象的でした。それから空の雲の動きや風を感じるように気をつけておりますが、まだまだ 修行が足らないようです。

 今から 20年以上前になります。車は敦煌の街から一番近い駅 柳園へ向かっておりました。近いと言っても128キロですから、3時間以上かかります。ゴビ灘の道をひたすらはしります。周りには遮るものもなく地平線があるのみです。半ばを過ぎたころから風が吹き始めました。最初は気にしていなかったのですが、小さな石がコツンコツンと車にあたるようになりました。そのうち げんこつ大の石から赤ん坊の頭ぐらいの石が風にあおられて飛んできます。見たことのない風景です。そのうち 大きな石がフロントガラスにあたり、ひびが入りました。しまいには車が揺れ始めました。これ以上は 危険と思い、何とか暴風壁をさがし退避しました。30分ほど待ったでしょうか、何事もなかったように風はやみ、いつものゴミ灘の風景にもどっていました。何ごともなかったからよかったですが、一つ間違えば大惨事です。

 私が生きてきた中で、あれほど『風が怖い』と思ったことはありません。 自然に対する畏怖の念を忘れてはならないと思った瞬間でした。

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