【16】オパールに魅せられて

 初めてシドニーを訪れたのはもう30年近く前です。そのころは今のように街は垢抜けておらずあまり活気も感じられませんでしたが、フェリーに揺られタロンガ動物園に行く時に見た紺碧のシドニー湾、そして吸い込まれそうな真っ青な海。「これぞシドニー」そんな思いで一杯になりました。
 それからおよそ20年、まさか自分がシドニーに住むようになるなんて。なんてラッキーなのでしょう。仕事の関係でオーストラリアの内陸部へ行きましたが、これぞオーストラリア。果てしなく続く地平線。灼熱の太陽。けだるくなるような空気。赤茶けた大地。行き交う車もなく、時折カンガルーが遠目にまさに闖入者を見るように見つめているだけ。ここはオーストラリアの奥地、アウトバック。しかし、こんな厳しい気象条件下でも人はたくましく生活しているのです。

 オパールの採掘場跡を住居にしているダッグアウトやその地域の観光素材の視察でしたが、このとき博物館で見たオパールの神秘に一目で釘付けになってしまいました。恐竜の骨、貝やベルムナイト(古代イカ)がオパール化し、オーストラリアの空、海、大地、太陽などの原色やユーカリの淡い緑がまばゆい光に凝縮されているのです。

 本当にオパールは魅惑的で不思議な石です。1cmの厚さのオパールを形成するのに500万年かかるそうです。プレッシャス・オパールなど宝石価値が高いものはもちろんですが、白亜紀に生息していた恐竜、貝、イカの骨がオパール化し魅惑的な光を放つのは偶然がもたらした世にも不思議な魅力です。
 そしてもう一つの魅力は世の中に1つしか存在しない自分だけのオパールを楽しめることでもあります。2年の赴任を終え帰国する時購入したオーストラリアが詰め込まれたオパールはいつも思い出とともに私の指でまばゆい光を放っています。 

By Tanabe

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