ブータンで竹製品は今でも生活で多く使用されています。人や馬が荷物を運ぶのに使用する背負いかご、野菜などを乾燥、選別する時に使用するざる、丸くて鮮やかなお弁当箱。自家製のバターなどを入れる曲げわっぱも竹製の物が使われています。国技のアーチェリーも竹製の弓矢が使われています。
私が住むブータンの首都ティンプー(標高2,400m)では竹が生息しているのをあまり見かけることがなく、竹製品を作っているのも見かけることがありません。ブータン南部(インド側)や標高が低い気候が一年を通して温暖で湿潤な地方には生息していて、殆どの竹製品はその地方で今でも手作りで作られています。
ブータンの竹製品の中でもお土産にも好まれるのは、“バンチュン”と呼ばれるお弁当箱です。アルファベットでは“Bangchun”と表記されますが、呼び方は地方によって少し異なり“ボンチュー”とか“バンチュ”とも呼ばれています。
バンチュンは軽さ、丈夫さ、鮮やかな見た目と三拍子そろった便利な竹製品です。身と蓋がほぼ同じサイズのざるのようなものを合わせて使います。少し小さい方が蓋で、蓋を身にはめ込んで閉めます。閉め方はそれだけなのですが、しっかりと閉まるため、横にしても、投げても開くことはありません。開けるのには少しコツが必要で、竹の柔軟性を利用して少し歪めながら開けます。
内側は色なしの竹でシンプルに編んだもの、外側は色つきの竹で模様を入れ編んだものを2枚重ねているので、多少の汁物を入れても漏れません。
柔軟で丈夫なため民族衣装の“ゴ”の懐に入れて持ち歩くのに重宝されていたお弁当箱でしたが、今はバックを持ち歩くようになったからか、保温性がないからか、お弁当箱としてはあまり使われていません。しかし、お茶請けの米菓子などのスナックを入れたり、果物を盛る容器にしたり、バンチュンがない家はないぐらい日常に溶け込んでいます。
バンチュンの外側は色つきの竹で仏教の文様を編み込んでいます。以前20個ほど一緒にバンチュンを買ったことがあるのですが、ひとつひとつ手作りだということもあり全て違いました。綺麗な文様を編み込んでいるので、容器としてではなく、壁に飾るのも使い方のひとつだと思います。
私も日本に帰国する時に友人に時々バンチュンを買って来てと頼まれます。リュックに柔軟に収まる上に中の物が潰れにくいので、登山をする人の間ではお弁当箱として人気があるそうです。友人は仕事場に焼き菓子などを差し入れる時にも使うそうですが、とても評判が良いとのこと。シフォンケーキを入れて持ち歩いても潰れないそうですよ。私の家のバンチュンも飾ってばかりではなく、もう少し活用しようと思います。