【178】湖南省でタピオカはいかが

 この夏、初めて湖南省を訪ねる機会に恵まれました。

 湖南省の省都・長沙は内陸部の都市として、重慶や武漢のように、とてつもない巨大都市で、高層ビルの林立だったらどうしよう...と密かに心配していたのですが、さすがに高層住宅は多いものの、ガラス張りのビジネス高層ビルが所狭しと林立したりせず、どこかのんびりとした空気が流れていました。

 旅行中は湖南料理が味わえると大いに期待していたのですが、いずれも、日本人団体に合わせたものか、名高い辛さは控えめで、うなるような美味には出会えませんでした。それでも、事前に予約もできなかった湖南省西部の里耶という町で、その場で予約した質素なレストランの料理は、たいへんおいしく、同行の皆さんも食が進んでいました。

 それでも、不満が残っていたので、帰国後に中国料理に詳しい社長に聞いたところ、「湖南は食文化が発達しなかったのよ」ということで、確かに、考えてみると「天府の国」と称される四川は、四川盆地の生産力を背景に、蜀の都としても発展し、古来、英雄豪傑、文人墨客が集う文化都市があり、食文化が大いに発展したわけです。一方で湖南はというと、自ら「湖南熟天下足(湖南熟し、天下足る)」と自慢するくらい、天下の穀倉地帯、随一の米どころでありながら、ほとんどが政権のある都市に収奪されてしまい、その結果、毛沢東や劉少奇、賀龍といった中国共産党の英雄を輩出し、共産党の支持基盤でもあったように、貧しい農村地帯であり続けたようです。地元で多様な食材を駆使しておいしく食べるような料理が発達しなかったのも無理のないところです。 

 そんな湖南省の南部の古鎮で人気沸騰中の鳳凰古城で、ちょっとびっくりする体験が。お客様が町の自由散策に出かけた後、ガイドさんから、「ちょっとタピオカでも飲みに行きますか?」と誘われたのです。個人的には関心はないものの、さすがに目下、日本でブームのタピオカが、湖南省山岳部の観光地で飲まれているとは驚きでした。あるいは日本人狙いかもしれませんし、もしかすると日本文化の直輸入なのかもしれませんが、日本の飲食文化が入り込んでいて、不思議な感覚でした。

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