【21】祭礼あり 通行注意

 彼岸花が田のあぜ道を真っ赤に染めるこの季節、そこに眠る先祖を詣でるため房総半島の南 端にある小さな村を訪ねることにしている。この時期半島のシーサイドラインは行楽客の往来で渋滞必至。自然と なれたローカルな抜け道を走ることになる。

村内の細い道をまっすぐ抜けようと思い、左右の生垣にこすらないよう車を減速したところで、はた、と1枚の看板に目がとまった。

[ 祭礼 神輿行列あり 08:00~19:00通行止 ]

神社につづく小道の手前に、迂回路の案内がでている。
今はちょうど通行止めの時間帯。やむなく案内板にある迂回路をゆく。

舗装されていないがたがたの道。タイヤが通ったあとに立つ砂埃の匂い。昨日の通り雨が残していった小さい水たまりを踏むと埃と雨の匂いが混ざり合ってなんとも懐かしい気分になる。砂利道の両脇には平屋の家が目立ち、へちま棚やソテツ、向こうにはとうもろこしの畑がさわさわとそよいでいる。
畑を渡る風にのって、かすかなお囃子の音と焼きもろこしの香ばしい匂いが伝わってくる。
いたずらに、ダッシュポケットに入れっぱなしだったインドネシア産の丁子たばこに火をつけた。
独特の香りが意識をあっという間に赤道の島へいざなう。

そうだ。
バリでもあんな看板よく見かけるな。
[ ADA UPACARA  Hati-hati berjalan ] ―祭礼あり 通行注意―

あの看板が寺院の前にあると、祭りでハイになった村人が柵から急に飛び出したり、神に捧げる舞踊を我も見んと鈴なり人が道まではみ出したり、男たちが闘鶏やカード賭博に興じ道路を占拠したり。予期せぬ飛び出しが多いことを意味する。そして車は寺院の前を通れず迂回するハメになる。
バリはまつりが多いものだから、しょっちゅう島中通行止めだらけ。通常20分の目的地まで迂回を重ね1時間以上かかることもザラだったりする。

あぁ。しばらくバリを訪ねていないなぁ。・・・そんなことをつらつらと考えつつ行く房総の秋空は、遥か南6,000kmのあの島へつづいているのに。

これから冬にかけて、バリのまつりも数を増やす。日本でいう焼きもろこしは、向こうではさしずめヤギの串焼き“サテカンビン”の香ばしい匂いだろうか。

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