【235】《法師》と那谷寺

 金沢に所用があり、北陸新幹線の延伸で賑わう石川県を旅しました。

 金沢からIRいしかわ鉄道で37分。粟津という無人駅に、老舗宿《法師》が出迎えに来てくれています。小松ドーム球場を横目に温泉街に入り、シラサギのコロニーの真ん前の宿に到着。ウェルカム・ドリンクに抹茶と加賀のお菓子がサービスされます。自慢の文化財級庭園を眺めながら一服してから、庭園沿いの長い廊下を歩いて部屋に案内されます。今回は日本庭園を取り囲む4棟の宿泊館のうち「秋の館」に宿泊します。

 粟津温泉は奈良時代の718年に泰澄大師によって「発見」されて以来、「薬師如来の慈悲による霊験あらたかな温泉」として1,300年の歴史を誇ります。なかでも《法師》は大師が弟子の雅亮法師に一軒の湯治宿を建てさせ、その湯守りを任せたのが始まりとされています。1996年には「世界最古のホテル」としてギネスに登録(現在は他のホテルが登録)されたほどで、実に46代に渡り一族のみで経営を続けている世界でも珍しい旅館だそうです。

 翌日はよく晴れて暑い朝、那谷寺(なたでら)に向かいました。717年に泰澄大師が創建したと伝えられ、花山法皇が命名(改名)したという古刹です。戦国時代に火災に遭って衰退していた那谷寺を復興したのが、加賀藩第二代藩主を務めた前田利常であり、本殿、唐門、拝殿、三重塔、護摩堂、鐘楼堂および庭園などを造営したといいます。

 琉美園と名付けられた回遊式庭園は水と石と緑の調和が美しく、境内の苔むした庭に注ぐ陽の光のグラデーションもみごとです。奥に進むと国の重要文化財に指定されている大悲閣という本殿があります。同じく重要文化財の三重塔から展望台に進むと、遊仙境という奇岩の風景がこのうえなく美しく広がり、思わず声をあげるほどです。

 金沢から出かけようと考えると、和倉温泉が名高いのですが、能登半島地震で営業再開できていません。北陸新幹線の加賀温泉駅は片山津・山代・山中の3温泉で構成される加賀温泉郷の玄関口ですが、ちょっと外れた粟津温泉と那谷寺はぜひとも訪れてほしいところです。

《法師》の庭園
那谷寺 遊仙境
那谷寺庭園

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