NHKの朝ドラ「虎に翼」が終わった。半年間見続けてきて、「ロス」な気分はあるが、じゅうぶんに堪能させてもらった気がする。
主人公・寅子の「はて?」は、物語の時代である昭和の初めから今日まで連綿と続いている女性や少数者に対する社会の無理解や差別に対するプロテストそのものだ。「なぜ、女性ではダメなのか?」、「どうして、そんなことが許されるのか?」という社会の理不尽に対する率直な問題提起だ。テレビドラマが避けそうな朝鮮人、障がい者、性的マイノリティへの差別や蔑視をも正面から取り上げてみごとだった。
当事者からすれば物足りなさや誤った理解への危うさもあったと思うが、それでもストーリー全体に憲法第14条「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」が貫かれているのでぶれることがなかったのだろう。
そもそもタイトルの「虎に翼」は『日本書紀』天武紀(上)の「虎着翼放之」、つまり「虎に翼を着けて放てり」から引用されていると考えられる(もとは中国の文献からの引用であろう)が、寅子にとっては「法」が「翼」だったのか。日本書紀で「虎」に比された大海人皇子は古代最大の内乱に勝利して日本古代国家の礎を築いたわけだが、寅子は差別のない社会への道を切り拓いてきたという寓意なのかもしれない。
「昔、こんな人がいました」という偉人伝でなく、すべてが今日につながっているとさえ思える人やできごとを描いて、最後まで飽きさせなかった。「先人の苦闘を無にせず、現代人ももっとがんばれ」というメッセージを1日の始まりに届けてくれていたともいえる。