【250】韓国の教育現場で感じたこと

 韓国が新学期を迎えた8月の末、ソウル界隈の障害児学校を訪問する機会に恵まれました。日本の障害児学校の教員たちによるグループで、3校を訪ねました。超有名私立大学の付属学校と私立の中・高校、公立の中学校で、いずれも素晴らしい施設と設備を誇ります。もちろん、韓国側として「見せたい学校」を選んだということはありえるでしょう。教育実践の内容については、日本との大きな差は感じないそうです。

 私が一番の違いと感じたのは教員の表情でした。日本の教員は絶望的なハードワークで、教員志望者は目まぐるしく減っています。私が就職した1980年代にはまだ「花形」職業のひとつでした。しかし、現在の日本では教員の絶対数が不足し、仕事量が激増し、児童・生徒の一人ひとりに対応する余裕などありません。

 韓国でも10数年前までは教員の給与は低劣で、不人気な職業だったそうです。しかし、教員や市民の運動によって教育予算が増やされ、今日では見違えるような待遇だそうです。日本との単純な比較はできませんが、日本の文部科学省の予算はだいたい5兆円台の半ば、韓国の教育部(部は日本の省に相当)の予算は日本円に換算すると10兆円を超えています。人口が半分の韓国が日本の2倍の予算を持っています。国家予算に占める割合でいえば日本は5%以下、韓国は約15%にもなります。そのため、障害児教育の分野でも、教員配置、施設・設備に関して、日本とは比べものにならないというのが現実です。

 日本人教員のグループを迎えて、校内を案内し、丁寧に質疑に応じてくれた多くの韓国教員たちの表情が明るく見えたのも、そのためではないかと感じました。せめても救いは、グループの面々に「このままではいかん」という共通認識があり、日本の教育現場を少しでも充足させるための努力をしようとしていることです。ヨーロッパの視察経験が多い筆者は、「うらやましい」、「日本では無理ね」という結論でなく、「同じ人間なんだから、外国にできて日本にできないわけはないだろう」、「私たちもがんばらなきゃ」という感慨をもってツアーを終えた多くの方々を知っています。筆者がこの仕事を続けてこられたモチベーションもそのあたりにあるのかなと思っています。

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