今年は例年より早い梅雨入り。くやしいことに、早く入梅したからといって梅雨明けも早いわけではないとか・・・。
雨降りの灰色の空がつづくと、スマトラ島ブキットティンギへ旅したときのことを思い出します。
ブキットティンギはスマトラ島に3つある玄関口のひとつパダンという都市から車で3時間。インドネシア語でブキットは「丘」、ティンギは「高い」を意味します。この町は、その名のとおり高原にある町。セレブ(?)なインドネシア人が週末避暑に訪れる、いわば軽井沢のようなところです。
港町パダンでまず名物の辛い小皿料理(ナシパダン)で腹ごしらえ。あまりのパンチの効き具合にひと汗もふた汗もかいたら、さあ、冷涼な高原リゾートへ出発です。
なだらかな山道を徐々に登りゆくと、先ほどの汗はどこへやら さわやかな風に上着がほしいくらい。それどころか、 途中 パガルユン村の王宮を見学したあたりから雲行きがあやしくなりだしたのです。
「スコールがくるかな」。ときは乾季。ザーッと通り雨が過ぎればまた太陽が照りつけるでしょうと楽観してブキットティンギに向かいました。ところが―
到着初日、終日雨。
滞在2日目、終日雨。しとしと。
最終日、終日雨。しとしと。しかも肌寒くて。
雨季でもないのに毎日が雨・雨・雨。「インドネシアのグランドキャニオン」といわれる大峡谷ガライシアノックを見晴るかす立地条件最高のホテルも泣いています。
でも、トレッキングするはずだったジャングルに降りそぼる雨のベールをホテルの窓から毎日眺めていた私は知ってしまったのです。
極彩色の赤道直下でも墨絵みたいな表情を持つことを。年中陽気なインドネシアにも しぃん としたミュートな時間があることを。
とっても静かでとっても寒くてとってもとっても色の少ないインドネシア。
元気いっぱい歩き廻れなかったけれど、持ってきた水着は役に立たなかったけれど、雨の旅もなんだかいいなぁ なんて。寒い南国もなかなかオツだな と心から思えた旅の思い出です。
by Ito