【92】ラマダン徒然草

「ラマダン」とは、354日を1年とするイスラム暦の、12個ある月のひとつです。
その1ヶ月間、イスラム教を信仰する人は太陽のあるうちはいっさいの飲食を絶ち、断食を行うのです。
なぜイスラム教徒でもない私がラマダンの話をするのかというと、ちょうどロンドン五輪に関連し「イスラム教国の選手、断食で力出ず。信仰をとるかメダルをとるか」のようなニュースを目にし、そういえば自分もラマダンには地味に泣かされているなぁ~と思い出したからです。

世界最大のイスラム教国・インドネシアを手配する機会のある私は、年初新しいカレンダーを入手すると、まっさきにラマダンの期間を書き込みます。ラマダンは西暦の一年よりやや短いイスラム暦を基にしているため、毎年日にちが変わるのです。気にしているのは、ラマダン自体よりラマダンが明けてからの連休。イスラム教徒にとって辛い禁欲生活が明けたあとの休暇ですから、もう国中がこぞってバカンスをとったり遠い親戚を訪ねたり。国土が鳴動するほどの、まさに「民族大移動」の言葉がぴったりくるほど人々が動くときなのです。

その鳴動期に外国人が旅行なんて…とんでもなく難易度が高いことは、説明せずとも容易に想像いただけることと思いますが、国中の交通機関、宿泊所がパンク状態になり、外国人の動く隙間などひとつもなくなってしまうのです。

ある年、ラマダン明け休暇の影響でインドネシア旅行を思うようにできなかったグループがあります。その翌年、彼らが旅先を検討する段階で私はさも知り尽くしたように「インドネシアはその時期ラマダンだし、明けた連休も控えているから、旅の計画を立てるときは十分注意してください」とアドバイス。彼らは彼国を避けインドへ行くことに。

ところがインドでもラマダン明けの休暇のせいで予定がままなりません。「お釈迦様とヒンドゥーの国に、イスラムは関係ないよね?」と発言したところ「なにを無知な!!インドにはイスラム教徒たくさんいますよ。もちろんラマダン月には断食しています」とインド人の友人に怒られるはめに。

さらに翌年、彼らはトルコへ。「ラマダン」などいう単語も浮かばなかった私があまりに知らなすぎただけなのでしょうか、トルコの企業から「そのあたりは断食明けの休暇なので、訪問は遠慮してください」との連絡が。これはもうある種の呪い…とついつぶやいてしまう自分がいました。

3年連続で旅の計画を阻まれ、4年目の彼らはめげず再度インドネシアへ行くことに。よりによってラマダン中にジャカルタの田舎でホームステイ体験をしたいと言い出したものだから、コーディネイトの苦労は並大抵ではありません。

ようやく農家数軒に了解をとりつけ、彼らは農家ステイを実行したのです。

帰国した彼らに「ラマダンだったから行動に制限があったんじゃない?楽しくなかったでしょう?」と問うたところ、彼らは目を輝かせ、「はい!深夜に食事をして、朝は日の出る前に食事をして、日中はなにもしませんでした。あ~、面白かった。異文化体験、いいものですね」と。強く成長したメンタルに心から拍手した出来事でした。

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