ブータンには“歩行者の日(ペデストリアン・デー)”という日があります。
毎週火曜日は各都市の中心部で朝8時から18時まで特定車両を除く車の乗り入れが禁止されています。特定車両は緊急車両や公共車(タクシー、市バス)、観光客のための車です。ガソリン消費の抑制、環境への配慮、国民の健康増進が目的とのことです。
この“歩行者の日”は今年の6月5日の世界環境デーから開始されました。政府から発表されたのは6月1日の夕方でした。あまりにも急な発表だったため、国民は車乗り入れ禁止の範囲もよくわからないままの開始となりました。
ブータンではこの数年で自家用車が急激に増加し、道路状況に合わない交通量となっています。ブータンは平野は少ないのですが、首都ティンプーでも小さく歩ける街です。“歩行者の日”の開始ニュースを聞き、私は車社会になり少しの距離でも車に乗る人が増えているので、“週1度だけだし、ブータン人は時間に余裕があるのだから賛成!”と思ったのですが、勝手にそんなことを決めたと批判的な人が多かったです。
しかし実際開始されて見ると、急な発表だった割にはみな決まりを守っていました。そして歩行者の日の感想も上々でした。夫婦でいろいろな話をしながら歩いたとか、随分会っていなかった同級生に久しぶりに会って話ができたとか、帰宅路に寺院、仏塔によってお祈りをして来たなど。
火曜日には自転車に乗ったり、歩いている国王、首相の姿も見かけるそうです。王妃は初日タクシーに乗って公務をしていました。自分達は特別だと区別しないところがブータンの良さだと実感できます。
私の家は車乗り入れ禁止内にありますが、住宅街で家の周りの道は未舗装道路なので元々交通量は多くないのですが、それでも車が全く動かないのでとても静かに感じます。子供が外で遊んでも安心です。
私の息子の学校は車乗り入れ禁止外にあり、通学路の道路が街の中を走れない車の抜け道となっているので、いつも以上に交通量が多くなっています。また乗り入れできない車がたくさん駐車されているので危ない状況です。一部のビジネスの妨げにもなっているようです。いろいろと改善点も見えてきています。
ブータンでは突然いろいろな試みが開始されるのですが、時間が経つと何となく廃止された状態になるものもあります。
今でも少し田舎になると小学校1年生でも毎日片道1時間以上歩いて通学している子が多くいます。車社会にどっぷり浸っている世代の人々でも子供の時には車に殆ど乗ったことがなかった人も多い筈です。火曜日だけのことなので、“歩行者の日”が続くと良いなと思います。
観光客の方は火曜日も車で移動は可能ですが、のんびりおしゃべりしながら歩いているブータン人に混じって、歩いていみるとブータンに流れる時間を感じられるのではと思います。