長いこと旅を生業にしているが、富山県は未踏の県のひとつだと思う。秋も深まったころ、訪れる機会があり、宇奈月温泉に宿を取った。
宇奈月は北陸有数の温泉地で、印象的な名前でよく知られている。北陸新幹線に黒部宇奈月温泉などと名乗る駅もあるが、実際にはかなり離れている。新幹線の駅からは富山地方鉄道で24分、富山駅からは富山地方鉄道だと1時間48分、途中まであいの風とやま鉄道を利用しても1時間半かかるので、それなりに不便だ。
そもそも宇奈月は温泉自体に歴史がない。というか温泉がない!
大正中期以降、黒部川の電源開発が進められるようになり、大正12(1923)年、黒部鉄道(現在の富山地方鉄道)が宇奈月まで開通し、7キロも離れた黒部川上流の黒薙温泉から長~い引湯管でお湯を引いている。それでも1日3千トンといわれるほど湯量が豊富で、宇奈月でも源泉は90℃もあり、サラサラの美肌の湯として名高い。今年が開湯100年の記念の年ということで、イベントも多く、NHKの朝イチでも取り上げられた。
黒部渓谷のさわりを楽しめるトロッコ電車にも乗ったが、終点の欅平で大雪に見舞われ、オープンドアのトロッコではかなり寒かった。紅葉もまずまずの美しさで、車内の室井滋さんのアナウンスも楽しい。
朝イチでも紹介された「賞味期限10分」のチーズケーキやモーツァルトを聞かせて醸造したという地ビールなどのお楽しみもあり、緑のきれいな時期に再訪したいと思わせてくれる温泉地だった。