【140】高校野球は判官びいき

 当社のオフィスは青山通りに面したビルの7階にありますので、眺めが楽しめます。応接室の広い窓からは神宮球場が見えます。といってもさすがにグラウンドまでは見えませんが、スタンドとバックスクリーンは視野に納められます。元高校球児の母である社長と元高校球児の私(親子では無い)は7月に入って甲子園の予選が始まるとそわそわして落ち着かなくなります。しまいには小ぶりの望遠鏡を配備して、ときどき得点経過などを覗いている始末です。今年の東西東京大会の終盤は熱戦が多く、バックスクリーンはさすがに各種速報サイトよりも情報が早いので、試合展開に一喜一憂していました。

 8月は甲子園で燃えますが、「強豪」「常連」と言われる高校よりも、「新顔」や「公立」の肩を持ちたくなります。「怪物」とか「スラッガー」よりも、ひたむきな選手の多いチームを応援してしまいます。近年では都道府県の高校野球勢力図は大きく塗り替えられていますが、大県よりも小県、関東以西よりも東北に気持ちが動きます。日本人一般に「判官びいき」という気性があると言われたりしますが、近年では「負け組」だとか「自己責任」だとか言われて、「弱肉強食」というか、「長いものには巻かれろ」というような風潮が強まっていることは悲しむべきことです。経済的、政治的、民族的「弱者」に対するむごい事件やヘイトスピーチも繰り返されています。格差社会を脱して、日本人本来の「判官びいき」に立ち返ってほしいものです。

 仕事を終えてオフィスを出ると、エレベーターホールから青山墓地と六本木ヒルズが目に飛び込んできます。青山墓地の一隅にある野球場も照明灯が輝いています。実は私はこの野球場を拠点のひとつとする草野球チームの運営に関わっていて、当社の応接室に来店された取引業者の方々で、その風貌(精悍とか色黒とか)を見込まれた方は、チームにスカウトさせていただいています。そんな努力のかいもあって、チームには旅行会社や航空会社、航空機や列車手配会社などの社員が増えてきました。元高校球児も、そうでない人も、力を合わせて白球を追う姿は草野球といえども甲子園に劣るものではありません。負けても、弱くても「ああ栄冠は君に輝く!」のです。

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