春は百花繚乱、皆さんは何がお好きですか?
私は多摩丘陵の育ちのせいか、田畑の周囲に咲く菜の花の鮮やかな色合い、わけても月夜の花の香りは季節感たっぷりで大好きです。そういえば「夕月かかりて、にほひ淡し。」と朧月夜の歌詞にもありますね。
海外でもきれいな菜の花畑に出会うと著しくテンションが上がります。
済州島は菜の花のメッカのひとつですが、近年の観光開発などでずいぶん減少したそうです。城山日出峰を遠景にした菜の花畑の写真は済州島観光ポスターの典型ですが、韓国現代史の悲劇・済州4.3事件の季節に訪問することが多いせいか、菜の花には最適期なのに、涙雨にたたられます。桜の開花期と重なると桜色と黄色と青い空がひときわ輝きます。
戦禍で荒廃した南京から日本軍医が種子を持ち帰って関東各地に広めた紫金草(むらさきはなだいこん/諸葛菜とも)は春に咲く清楚な花ですが、春の南京に紫金草を訪ねると、菜の花と混在して紫と黄色のコントラストが美しく、たいへん印象的です。
ヨーロッパでは春が遅いせいか、菜の花の花期が長いような気がします。ころにチェコの田舎を走行していましたら、それはそれはみごとな菜の花畑が連続していました。丘を埋め尽くすように咲き誇る菜の花は、ボヘミア(チェコ西部)の牧歌的な風景とよくマッチして、旅をハッピーな気分にしてくれます。菜の花のおひたしも好物ですが、ヨーロッパでは菜種油を取るためのセイヨウアブラナで、食用にはしないそうです。チェコのセイヨウアブラナ生産は米国やロシアを凌いで、堂々の世界10位です。
食用といえば、5月のヨーロッパではシュパーゲルも欠かせない風物です。ドイツでは4月中旬から市場やスーパーマーケットに出始め、6月24日に出荷停止になるという季節限定の白アスパラガスです。長い添乗経験でもこの時期にドイツ語圏に出かける機会がなく、ようやく出会えたウィーンのレストランでは、無遠慮にガツガツ頂戴いたしました。
便利極まりない日本の都会では、季節感が薄れていますので、世界の季節感たっぷりの風景や料理はこの上ない旅の楽しみです。