日本では5月5日は端午の節句になっていますが、中国では、旧暦5月5日に行うことが一般的です。西暦に換えますと、6月の中旬か下旬になります。今年は6月19日でした。
「端午節」の由来はいまから2300年前の中国の戦国時代からです。
楚の国の国王の側近に、屈原(前340頃~前278頃)という政治家、詩人がいました。とても正義感があって、国を思う情は強く、人々の信望を集めました。しかし、彼は陰謀によって失脚し、国より追い出されました。流刑地へ行く途中、楚懐王の死亡と都の郢城が撃破されたことを聞いて、楚の将来に絶望した屈原は、汨羅江という川に身を投げてしまいました。
楚の国民達は、小船で汨羅江に行き、太鼓を打ってその音で魚をおどし、粽子(ちまき)を投げて、屈原の死体を魚が食べないようにしました。その日が中国の年中行事になり、へさきに龍の首飾りをつけた船が競争する行事が生まれました。これは今日の「賽龍舟」(ドラゴンレース)の始まりだそうです。
これが粽子の起源だそうです。毎年旧暦5月5日、屈原を供養するため、祭りが行われるようになり、やがて中国全土に広がりました。
中国の一般家庭では、この日必ずちまきを食べます。糯米と肉などの具を笹で包んで蒸します。中身はいろいろな種類がありますが、栗、なつめ、あずき、くるみ、蜜漬けの干した果物、竜眼、ハムなど、何でも入れられます。形は三角、四角、菱形が一般的です。味付けは甘いほうが多いですが、お肉の入ったちまきはだいたい醤油味か塩味です。また、辛口の好きな四川省には「酸辣粽」(辛い漬物の入れたちまき)もあります。印象深いのは子供の時、田舎のおばあちゃんの家で食べたちまきです。漢方薬を入れて「益智粽」といいます。子供は食べたら頭がよくなるそうですが、大人の祈願かもしれません。「益智仁」は腎臓にいいので、お年寄りにも最適です。
四川省の人々はこの日、また「塩蛋」(あひるの卵の塩漬け)と「荷葉稀飯」(蓮の葉のお粥)を食べます。あひるの卵と蓮の葉は解熱効果があり、暑い日には非常に体にいいです。荷葉稀飯は私の夏の最愛です。蓮の葉の独特な清香と塩漬けたあひるの卵の黄身には絶妙に味が合います。
端午節には、また各家の門に菖蒲やヨモギの葉を刺す習慣があります。急に暑くなるこの時期は、昔から病気にかかりやすく、亡くなる人が多かったそうです。その為、旧暦の5月を「毒月」と呼びます。菖蒲とヨモギは殺菌、免疫増強の作用があるため、厄除け、毒除けの意味で、菖蒲やヨモギの葉を門に刺します。また、菖蒲とヨモギの入れたお風呂に入り、ちまきを食べて、健康増進を祈願します。
今年の夏は暑くなりそうですので、私も6月19日に中華粽子を食べました。夏の暑さを乗り切ろうと願っています。