【82】インドネシアのさかな感

しつこい暑さが去り、ようやく秋らしい陽気になってきました。
今年は震災の影響で東北方面からの水揚高が心配されていましたが、岩手県宮古漁港から新鮮なさんまが6,000匹も届き目黒のさんま祭が盛大に執り行われたニュースは、みなさまの記憶にも新しいことと思います。

網に並んでこんがり焼かれているテレビ映像をみながら、ちょうど遊びに来ていた友人が、「ねぇ、インドネシア語にサンマってあるのかなぁ」と言い出しました。彼女はバリ好きが高じて今インドネシア語の勉強にはまっているのです。
「さぁ。サンマそのものを指す単語はないかもね。でも、イカンビルー(青い魚)とよんでいるかも」私の答えに間髪いれず、「なにそれ!そんないい加減な話ある?」と懐疑的です。

インドネシアでも私が訪ねたことのある範囲内での話ですが、ジャカルタのような大都会は別として、だいたいどの島のどの町の市場でも、買う方も売る方も魚のことを「赤い魚」「光る魚」「コブのある魚」「尾の魚」と呼びわけています。ヘタに「赤い魚の本当の名前はなに?」と訊こうものなら、急に難しい顔になって「う~ん…赤くて…トゲがある魚」というような答えが返ってくるのがせきのやまです。ついでに野菜の話もすると、マメ類などは「大きなマメ」「長いマメ」「苦いマメ」と呼びわけられていて、外来の野菜にいたってはただいっしょくたに「野菜」とよばれています。

そんな大らかなインドネシア人が唯一(恐らく?)きちんとした名前でよぶ魚があります。それは、マグロです。実をいうとインドネシアは漁獲量世界一を誇るマグロ王国で、列島の南側にはとりわけ良質の漁場が広がっています。
バリの州都デンパサールの市場でも、ときどき新鮮な生マグロが一頭売られているのをみかけます。日本の料理職人の目利きをもってみても立派なシロモノだそうです。港から「明日新鮮なマグロが揚がる」と連絡を受けると、島内のおもに日本人に噂が広がり、日本食レストランの経営者などがこぞって漁港に詰めかけ、新鮮な切り身を入手していくのだそうです。

インドネシア語の辞書をひいてみました。
カツオの欄には「マグロ(インドネシア語でトンコル)」と書かれていました。
サバはかつお・まぐろと同じ仲間なのに「さかな(インドネシア語でイカン)」とだけ。格の違いを見せ付けられた気分です。
言わずもがなですが、サンマも「さかな」でした。予想通りで少し笑えました。
インドネシア人にとってマグロがどれだけ大切な魚であるか知るよい機会になりました。

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