日中の空気がようやくぬるみはじめました。
しつこくつづいた寒さのせいで、今年は梅も桜も開花予想が例年より1週間ずつ遅いとか。
でも、確実に一歩一歩春に近づいているのを実感します。
日本人ならばどなたでも、思い出深い桜の名シーンをお持ちのことと思います。私にもいくつか心に残る桜がありますが、なかでも満開の三春滝桜は脳裏に鮮明に浮かんできます。
去年の春、福島の三春町に滝桜を見にいったのは、震災で観光客が激減し困窮している地元の旅館を応援する旅でした。
三春町の滝桜は大正11年に国から天然記念物指定を受けた名木です。日本三大桜のひとつに数えられていて、毎年開花の時季には国の内外から観光客が押し寄せる、福島の観光名所となっています。
その日はちょうど満開の週末でした。新白河駅からレンタカーで旅していた私たちは、滝桜につながる交通渋滞を予測して朝宿をはやめに出発しました。ところが、震災の影響でしょう、思った以上にすんなり到着できたのです。例年ならば滝桜目当ての大型バスや自家用車が狭いいなかの道路にぎっしり長い列をつくり、「歩いた方がだんぜん速いよね」級ののろい進み方しかできません。
これは、震災後の不安と閑散したわびしさが充満する空気のなかにみつけた小さなラッキーでした。さすがに桜のたもとにも人が大勢集まっているものの身動きとれないほどの混雑ではなく、普段ならば混雑期には遠巻きするしかできない滝桜と存分に触れ合えた、一生に一度かもしれない体験でした。
今年また、桜の季節がめぐってきます。
進まない原発事故処理のために福島への客足が無いに等しく、直接被害を受けていない地域さえ「福島県である」だけで倦厭されている現状を考えると、あの美しい桜は今年も多くの人から愛でられることなくひっそり満開を迎えるのでしょう。
本当に、本当にもったいないはなしです。
この春から一年間、福島県への旅行に対して東京都が応援の意をこめ旅行代金の一部を助成してくれることが決まりました。弊社も都に取扱旅行業者として登録しましたので、福島を応援するツアーに助成を受けることができます。
三春の滝桜はいわずもがな、福島にはほかにも魅力的な観光資源が私たちを待っています。
会津若松の飯盛山では白虎隊や鶴ヶ城よりも不思議な建築物「さざえ堂」に魅せられ、五色沼ではにわか化学者になって色の変化について論じ、震災のダメージを乗り越え最近完全オープンした滞在型リゾートでハワイを感じ、新緑のなかSLばんえつ物語号で喜多方へラーメングルメを楽しみに…
この機会に福島の魅力を満載したツアーをたくさん提案し、みなさまと一緒に福島を応援したいと思います。