11月には入り、朝晩 冷え込んできました。毎年の11月7日前後は、二四節気のひとつ「立冬」をむかえます。
「立冬」は二十四節気の中、非常に重要な節気のひとつです。中国の伝統的な考えでは、「冬」は「終、結束」の意味で、中医学では、この節気が来たら、「陽気潜蔵、陰気盛極、草木凋零、蛰虫伏蔵」、つまり万物の活動が休止に近い冬眠状態に入り、精力を蓄え、来春の生気を養うために準備する時期です。
人類はもちろん冬眠などしませんが、中国では「立冬補冬」の習慣があります。十分な休養をとり、精力を養うのは基本ですが、体調を整える食べ物と食べ方も大事なことです。季節に合わせて食べ物を選び、調理して食べるという食生活こそ、健康な体と精神を育て、維持し、病気を未然に防ぐ最良の治療法だと、昔から中国人はそう考えています。食べ物で体内の調子を整えることは中国語で「補」といいます。
冬の空気は乾燥して、人々は室内で過ごす時間も多くなり、運動量がわりと少ないですから、体内のエネルギー(中国では「熱」といいます)がたまりやすく発散しにくいので、呼吸感染、咽喉炎、口腔内潰瘍、便秘などの症状がでやすいのです。立冬の日に適した料理を食べることにより、体内の毒素が出しやすくなり、病気をしないで寒い冬を無事に過ごすことができます。
もちろん 中国の国土は広く、地方によって地理環境、気温などが全然違いますから、立冬で使う「補」の材料も違います。北西地方の冬は非常に寒いので、牛肉、羊肉、犬肉などと一緒に漢方で煮込んだ料理が適しています。長江の南の地方は、冬でも気温が温暖ですから、烏骨鶏(うこっけい)と当帰(とうき)、鮒とクコのスープをよく食べます。また、標高の高い山地では、雨量が少なく、非常に乾燥していますので、果物に氷砂糖をつけて食べるか、煮込んだスープを飲みます。特に梨と氷砂糖の煮込んだスープはのどをうるおし、咳を止めます。
成都の実家では、立冬の日に母は必ず3品の料理を用意します。
いずれも作り方が簡単です。
黒芝麻粥(黒ゴマお粥)
黒ゴマ粥はまず黒ゴマを煎り、すり鉢であたり、倍の量の玄米・水と一緒に1時間以上煮込むと、お粥が出来上がります。このお粥は肝臓と腎臓に特にいいそうです、また、植物繊維豊富のゴマは便秘にも良く、美容にも効きます。
虫草蒸老鴨(冬虫夏草とあひるの蒸し物)
「虫草蒸老鴨」のあひるは必ず年取ったオスのあひるを使います。内臓を取り除いて、一匹ごとに鍋で湯がきます。お湯から取り出して、内臓の取り除かれたお腹に冬虫夏草を5枚入れ、紹興酒、山椒、生姜、ねぎ、食塩、適量の水を加えて、蒸し器で二時間以上を蒸します。冬虫夏草は強い免疫機能を増強する作用があり、陽気を補う一方、あひるは解熱作用があり、体内の毒素を出して、陰気を補います。中医学では、体の「陽気」と「陰気」のバランスを取るのはとても大事です、「陰」「陽」のバランスが良く取れた体は病気しないですから、この一品は薬膳料理の代表の一つとも言えます。
蕃茄砂糖藕(トマトとレンコンのあえもの)
「蕃茄砂糖藕」はトマト二個とレンコン一節(中ぐらいのもの)を薄く輪切りにし、水にさらしたあと、砂糖であえるだけです。トマトは疲労回復や食欲増進に役立ちますが、レンコンは肺臓にたまっている熱を解熱する作用があり、のどの渇きを防ぎ、風邪の予防もします。
今年の「立冬」は11月8日、日本では冬虫夏草と丸ごとのあひるを手に入れるのは難しいですが、
黒ゴマお粥とトマトとレンコンの和え物を作って寒い冬に備えようと思っています。