【53】歌舞の故郷・メキット

 私は踊りが好きです。それは幼いころから踊りを見て育てられたからかも知れません。踊りを専門にやっているわけではありませんが、音楽が聞こえてくると思わず踊りたくなります。踊るとやはり楽しい気分になれます。

 私のふるさとの新疆ウイグル自治区ではどこへ行っても踊りが見られますが、中で最も特別な雰囲気を見せてくれるのは、メキット(Makit)という小さな町のドラン・メッシュラプという踊りです。

 メキット(Makit)はシルクロードの都カシュガルから東南へ約180キロメール行ったところに綿と麦の畑が広がる農業の盛んな田舎で、人口21万人の小さい県です。この県は「踊りの故郷」と呼ばれています。それは、昔からここで生活をしてきたウイグル人の農民たちが「ドラン・メッシュラプ」という踊りを数百年に渡って代々伝わって踊ってきたからです。ここでは、歩ける人なら誰でも踊り、話せる人は誰でも歌い、歌って踊って互いに喜びを伝えあいます。みんなで楽しく豊作のお祝い、祭日のお祝い、結婚のお祝いをします。踊るには舞台はいりません、自分の庭で踊ります。踊る人は年齢関係ありません、70歳のお爺さんでも、十代の少女でも、向かい合ってみんなで楽しく踊ります。

 メキットに住む人たちはドラン人(Dolanliklar)とよばれます。ドランはウイグル語で“集中”という意味を表し、タリム盆地に定住している人々のことをいいます。ドラン人が踊る踊りはドラン・メッシュラップ(Dolan Mashrap)と言われています。 毎年、秋の豊作時期、村ごとにこのドラン・メッシュラップが盛り上がりますが、お祭りのお祝いや結婚式のお祝いの時も踊ります。

 ドラン・メッシュラップは、村の農民が楽器を弾いて、音楽と歌に手足の動きを合わせて踊ります。最初は男女四人が向かい合ってゆっくりと踊り始めますが、終わるころは音楽のスピードが速くなり、踊る人の数も増えます。やがて 周りで見ている人たちも一緒に踊りだします。時計の反対周りに回って踊ります。始まりから終わるまで約一時間かかりますが、これで一段落です。段落が2,3,4と続きますので、意外に楽しいものです。特にお祭り時は夕方から始まった踊りが翌日の朝まで続くこともあります。村中の人が家族で参加し、自ら楽しめるみんなの踊りなのです。

 ドラン・メッシュラップを伝えていくことは、ドラン人住んでいるタリム盆地がだんだん砂漠化していくという自然の厳しさとの戦いかもしれません。数百年経った今でもドラン人は踊りを続けています。彼らが歌う純粋な歌声と感動的な踊りがあったからこそ、オアシスが広がり、平和な世界が続いているのではないかと思います。

 シルクロードの旅でお出かけになった方は、カシュガルの立ち寄りに是非メキットのドラン・メッシュラプをご覧になってください。きっと忘れられない感動を与えてくれると思います。

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