海外を旅行していると、しばしば街中に猫を見ることがあります。
人間とつかず離れずの距離で、異国の街並みに溶け込み、自由気ままに生きているたくましい猫の姿は、帰国後も、旅の楽しい思い出とともに鮮やかに思い出されます。
日本でも、昔は野良猫なのか半分飼い猫なのか・・・というような猫をあちこちで見かけていたように思いますが、現在は、病気や交通事故などの原因からか、特に都市部では猫が外を気ままに歩くのは難しい時代になっているようです。
東京の下町、谷中は“猫町”と呼ばれるほど、猫に出会える町として有名です。猫が居る風景を撮りに、東京のど真ん中、山手線の内側にある人と猫が共生する町を散歩してきました。
雨上がりの午後ということで、猫と出会えるだろうかと不安を抱きつつ最寄り駅の日暮里駅を降りると、いかにも歴史が深そうなお寺が並び、町並み散策への期待が高まります。
更に進むと谷中銀座商店街入り口、通称 “夕やけだんだん”と呼ばれる下りの階段に到着。ここは猫が集まるスポットとして有名ですが、まだ地面は午前中の雨の名残でぬれていて、当然ぬれるのが嫌いな猫は一匹もいませんでした。
緩やかな下り坂の商店街は、一昔前当たり前に日本各地にあったような味わいある佇まいの商店が立ち並び、原宿の竹下通りにも負けないくらい人であふれていました。洋品店や惣菜屋、メンチカツが飛ぶように売れる肉屋の他に、猫のモチーフの雑貨を扱う店や、猫の尻尾型のドーナツ屋があり、あるお店の屋根の上には猫の姿が!大きい猫だなーと思ってカメラを手に近づいてみると、本物そっくりに造られた猫。これは地元東京芸術大学の彫刻科の生徒さんが制作した作品とのこと。懐かしの商店街の風景を様々な猫たちが個性的に彩っていました。
その後細い路地をのんびりと散策。古い民家を改築した雑貨店やカフェ、ギャラリーと歴史あるお寺、歩いても歩いても見飽きることがないほどです。しかし、猫が居そうな路地、昼寝していそうな静かな境内には猫の姿は無く・・・諦めの境地で“夕やけだんだん”に戻りました。
夕日に照らされる階段には小さな人だかりが!そっと近づいてみると数匹の猫が夕暮れ時を思い思いに過ごしていました。
その周囲には道端で佇む縞猫におやつをあげようとする人、人の手が届く階段の端で昼寝をする三毛猫と、眠りを妨げないように静かに離れて撮影する観光客、三毛猫について、まるで自分の孫を自慢するように、この子はどういう子でと観光客に説明するおばあさん。
猫を温かく見守る人たちの輪に私も交ぜて頂き、可愛いまん丸の三毛猫を撮影。
次回はもっとたくさんの猫と出会えるよう、晴れの日に訪れようと心に誓い、日暮里駅の方へ振り返ると、駅を挟んで反対側には今どきな高層タワーマンションが林立していました。
下町情緒と三毛猫、美しい夕焼け、そんな懐かしい町、谷中。いつまでもこのままであって欲しいと思いました。