【37】熱く想う

新年 明けましておめでとうございます。

昨年の暮れのことです。家の近くの停留所でバスを待っていると、隣に立っていた挙動不審気味の初老の男性(その方、ずっとひとり言をぶつぶつつぶやいていたんです)から訊ねられました。
「あなたは富士山に登ったことがありますか?」
無視するのは忍びないけれど馴れ馴れしく話に花を咲かせるのもためらわれ、「・・・・い、いえ」とだけ小さく答えてなるべく目を合わせないようにしていました。その男性はひとり言なのか私に話しかけているのか判別の難しい距離感でつづけます。「最近の若いものは富士登山なんてかったるいこと、興味ないのかね」
答えるつもりもないのに、その男性が少し気の毒に思えて、私は返しました「人によると思いますよ」
私の家の周りには、マンモス大学のキャンパスがちらばっています。その男性はどうやらその大学の先生(富士登山は登山部の合宿かゼミ合宿?)のようです。

「来年の夏に富士山に登ろうと提案したけれど、子供たちの反応がいまいちで寂しい思いをしている。富士山の御来光は人生を変えると思うがなぁ」つぶやく男性のその眼には強い力がたたえられているようにみえました。

そのあとすぐに目的のバスがやってきて、私たちは乗車し、別々の座席におさまりました。
その男性はバスのステップを上がるとき「ありがとう。参考になったよ」と言ってくれましたが、私はそのあと悶々とした思いを引きずらずにいられませんでした。
『どうしてあの方にあんな素っ気無い言葉を返したのか。“あなたのその情熱で今夏学生は富士山の朝日をみますよ”と伝えなかったのか』
その男性の熱い思いを受けて、部外者の私が 富士山登ってみようかなぁ と心動いたのですから、身近にいる学生さんたちの心が動かないはずはありません。

その日は外出先でも帰宅したあとも、ずっとずっとそのことを考えていました。そのうちその会話への回想が思考になり反すうされ妄想に発展して、眠りにつくころには『私は人の心を動かす情熱をもって旅を想っているだろうか・・』などと2007年に出会った旅すべてを思い返して反省するに至り、図らずも一年のしめくくりにふさわしい時間をすごしてしまっていました。

さてあの不思議な空気をもった男性とのわずかな触れ合いは、今年関わる旅に対する心がけへの啓示だったのでしょうか。

2008年、熱い思いと新鮮な気持ちをもってみなさまと一緒に旅を考えていきたいと思います。本年もよろしくお願いいたします。

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