【14】手

   春節も終わり、暦のうえでは春です。
吹く風はまだまだ冷たい毎日ですが、光の中に春を感じるようになりました。
今年は例年にない大雪の地方もあり、厳しい冬でした。普段あまり家事らしい家事をしない私ですが、この寒さのせいで手あれもひどく、せっせとハンドリームをぬりこんでおります。

今日もパソコンに向かう前に、ハンドクリームをぬりながら、あることを思い出しました。

   私がはじめて中国に行ったのは1978年でした。かれこれ 30年以上前になります。当時は中国旅行が始まったばかりで、ホテルも行く前までわからないというような今では考えられない時代でした。観光より友好第一ということで、観光だけでなく学校や工場や農場訪問が必ず、組み込まれていました。

   10月も終わり、山西省の農村を訪ねました。10月とはいえ、もう 枯葉が冷たい風に吹かれ黄色い土のうえをかさかさと音をたててまっていました。私たち一行は寒い寒いといいながら農村訪問ということで指定された集会場に入っていきました。そこには赤い頬をし、綿入れをきた若い娘さんが恥ずかしそうに私たちを迎えてくれました。おそらく、上からの指示でこの場にだされたのでしょう。中国旅行は当時『拍手と握手』といわれており、私も考える事もなく握手をしようと綿入れを着たおじょうさんに手を差し出しました。そして、はっとしました。大きくて厚くて暖かい手でしたが、まだ10月だというのにかさかさとあれ、手の所々からはうっすらと血さえにじんでいるのです。とても20歳前後の女性の手とは思えませんでした。

   農村訪問をして、いくら話を聞いても理解はしても体感はできなかった私ですが、その手に触れたとたん農村で生きることのたいへんさを痛感しました。
   何十年もたった今でも忘れられない握手でした。

By Toikawa

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