【19】トロントを歩いて

 国際都市東京に住み慣れた私は、初めてトロントの街を歩いた時、やはりその人種の多さに驚きました。街を歩いていると、本当に多種多様な人々に出会います。中国語、イタリア語、タミール語、ポルトガル語、スペイン語など、いろんな言葉が耳に入ります。カナダ国内は英語とフランス語が公用語として使われていると聞いた時、英語下手のうえフランス語を全くできない私はトロントに着陸するまで、少し緊張しました。でも、その緊張感もチャイナタウンのある四川料理のレストランですぐ吹き飛びました。

 注文を聞きに来た従業員の純粋な四川語に驚き、100%の四川の家庭料理のメニューを堪能しました。まさしく自分の故郷に帰って、成都のどこかの普通なレストランに入ったような感じでした。料理の味がとても辛く、とりわけ山椒の辛さ(しびれ)で気分爽快でした!完全に「外国」にいることを忘れてしまいました。

トロントの中華街

 チャイナタウンも横浜の中華街などと違う感じで、本当の中国国内の町のように、活気があり、中国各地の方言が聞こえます。外国人の私の目にしてみれば、横浜の中華街は日本人客向けの観光地で、とてもきれいで豪華に造られ、お料理も日本人のお好みに合わせて、高くて美味しくない、一度行ったら絶対二度と行きたくないところです。トロントのチャイナタウンはほとんどカナダに移民したばかりの中国人がそこに住んでいて、安くて美味しい本場の中国各地方の料理が味わえて、とても親近感があります。

 トロントはユネスコが認めている世界で一番人種が多い都市です。また、住みやすい街としていつも上位に入っている街です。最初はユネスコにちょっと疑問を持っていました。長年日本に滞在している私は、東京は非常に交通が便利で、都市の諸設備などもすべて整備されていて、物価や家賃を除いて私はとても住みやすいところだと思っていました。しかし トロントで滞在して、その違いをすぐ感じました。

 トロントでは英語をしゃべれなくても、不便を感じません。街の中、チャイナタウン以外、ホーリッシュタウン、インディアンタウン、グリークタウンなど各国、各民族のタウンがあります。そこで英語を話せない人がたくさん生活しています。

 日本に来たら日本語を話せないと、生活できないとまでは言いませんが、いろいろな場面で不便を感じると思います。(中国も同じ)。東京も近年外国人がたくさん住んでいます。街や公園では外国人を見かけることも珍しくありません。でも、社会の主流はやはり「日本人」です。日本で長年生活している中国人のお母さんから聞いた話です。日本生まれの娘さんと東京の街で歩きながら中国語で話をしたら、娘さんは周りの目を気にしていたか、「お母さん中国語やめましょう。恥ずかしいよ」と言ったそうです。それを聞いたお母さんはショックでした。どうして娘さんは恥ずかしく思ったのでしょうか?日本人の子供たちは小さいから「集団性」、「統一性」、まわりとの「協調性」などを重視して教育されたので、他人と違うと周りと孤立してしまいます。そうなると 自分の居場所がなくなりますから、周りの人と違うと「怖い」、「恥ずかしい」と思ってしまうのではないでしょうか。

 日本や中国の単一民族性と違って、カナダは世界100以上の国から移民を積極的に受入れ、現在トロントでは60以上の民族が居住しているそうです。トロントの人口の49%はカナダ外で生まれた人で、英語以外を家で話す人は人口の約3分の1だそうです。民族の多様性は社会、芸術、娯楽、飲食などの多元化文化の繁栄を促します。ここでは75種以上のエスニックレストランが営業されており、65紙以上の各民族の新聞が発行され、79以上もの英語以外の出版物があるそうです。

各々の民族がしっかりした文化を持ち、お互いを認めながら生活しています。
                                                                                  それがトロントの魅力です。

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